リンクから教室へと広がる変革の輪

 WE(フリー・ザチルドレン)がカナダで展開しているWE Schoolsでは、多くの学校で社会を変えるチェンジメーカーを育てる授業を行っています。

今回はある二人の先生のストーリーをご紹介します。(清田)

https://www.we.org/stories/british-colombia-teachers-united-by-hockey-we-schools/

 


 

すべては、は教職員間で毎週行われるホッケーの試合後の、談笑から始まりました。
 

その場面はお馴染みの光景で、ブリティッシュコロンビア州のカリブー学区中から来た先生と校長先生たちが、ロッカールームでスケート靴の紐を緩めながらおしゃべりしていました。

冗談を言い合っていましたが、そのうちマイク・ウィルソンが議論の音頭をとって仕事の話になりました。
 
ウィルソンはレイクシ中学校のコラムニッツァキャンパスの先生で、深い感銘を与えることでいつも評判になっていました。

その週は、彼の生徒たちが主導していた最新のWE Schoolsのキャンペーン、彼らの行動が地域に与えるであろうインパクトについての話でした。
 
新米教師のケビン・マクレナンにとって、ウィルソンの話は啓示のようなものでした。「耳をそばだてましたよ」と彼は思い返します。

マクレナンはちょうどマイル108小学校で自分のクラスを持ち始めたばかりだったので、WE Schools のプログラムがどうやって生徒達に変化を起こすよう奮い立たせたのか、ウィルソンが話しているのを人一倍熱心に聞いていました。

「私はウィルソン先生が話すのを聞いて、『やるべきなのはこれだ!』と思いました。」
 
まもなく、ウィルソンはWEついてマクレナンの相談相手となりました。

彼らは社会運動について何時間も語り、生徒たちを巻き込むためのアイディアを共有し、共同計画を考え出しました。マクレナンは「私は夢中になりました。その考え方がとても気に入りました。」と回想します。
 
WEのムーブメントが火を付けた情熱は、ウィルソンにとっては新しいものではありませんでした。

実は、ウィルソン自身も、 自身の勤務校で生徒と教員が前向きな気持ちになれるような取り組みを探していたときに、WEに巡り合ったのです。
 
ブリティッシュコロンビア州で最後に起こった教員ストライキの後、彼の学校には暗い雰囲気が漂っていました。

WEスクールをレイクシティ中学校へ導入することは学校を前向きな空気で満たし、みんなに使命感を与えました。

ウィルソンは「学校のモラルの意識が向上しました。」と断言します。
 

 


変化は徐々に起こり始めました。まず、新しく作られたWEクラブの10人の生徒たちから始まりました。

クラブが与えた最初のインパクトは、防災用品を先生にプレゼントするという親切な行為でした。

「私たちは『もしも良かったら、ビー玉をいくらかどうぞ』というメモと共に、カード、防災用品のほかに、チョコレートバーとたくさんのビー玉を配布しました」とウィルソンは嬉しそうに思い返します。
 
今日では50人以上の生徒たちがクラブに所属し、部員数と同様にその影響も、急激に大きくなりました。

こころの健康、飢餓や環境問題を含む課題に取り組んでいる生徒たちが主導して、毎月新たなキャンペーンが行われています。
 
WEスクールをレイクシティ中学校のコラムニッツァキャンパスに持ち込んだ人間として、ウィルソンはクラブの人気には驚きません。

彼の見方によると、その魅力は元から備わっていたものなのです。

「この活動は参加しやすいです。人間は他者を助けたいという想いを本能的に持っているのだと思います。だから子どもたちも飛びつくのでしょう。」
 
同じことは教育者についても言えます。つまり、ウィルソンが自分のホッケーチームの先生たちをもっと多くWE Schools programに入会させても不思議はないのです。

「ホッケーリンクはいつも、先生と校長先生たちがまとまって話すのに格好の場所です」と彼は言い、自信満々にこう付け加えます。「私たちのチェンジメーカーチームは毎シーズン成長しています。」
 


彼がマクレナンとの初期の関係を思い出すと、「試合の前後、また試合中でさえもベンチに座って話したことで、私たち二人は生徒たちへの考えと目標を共有してきたことに気づけました」と言います。

それ以来、彼らはこれらの社会問題に一緒に取り組んできました。
 
同僚たちと氷の上にいると、ウィルソンはチームワークがもたらした影響を思い出します。
小さなリーグのコーチとしての13年間、スポーツは彼にリーダーシップと共通の目標に向かって一緒に取り組む意義を教えてきました。

「それは先生としての自分を形作るのに役立ちました」と彼は氷の上での20年を振り返って言います。

「チームの一員であるとき、『ME to WE』という哲学はとても重要です。私たちは、個々人としてよりも集合体としての方が強いのです。私はこの哲学を自分のクラスや学校にも当てはめようとしています。」
 
ウィルソンとマクレナンは今学期も教室で(そしてリンクで)、社会をよりよくするための活動に取り組んでいます。

二人の先生たちの勤務校が共同で取り組むプロジェクトもあります。例えば、開発途上国教育のために資金を集めることはもちろん、先住民の人たちが抱える問題についての啓発活動、貧困やホームレス状態の人たちへの支援取り組むことなどです。
 
マクレナンはWEのルーキーで、ウィルソンは年季の入ったベテランです。カナダ中の先生たちと同様、二人は生徒たちがWEのムーブメントに加わるよう奮闘してきました。そしてそれはすべて、アイスリンクから始まったのです。

(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ 翻訳:翻訳チーム 中根葵  文責:清田健介)
 

 


十代の活動家が、おとなに伝えたいこと

子どもが、「世界は変えられる」と信じられる社会を創っていくためには、どのようなことが必要なのでしょうか?

十代の活動家のキアラ・ピカオは、おとなの後押しや応援が不可欠だと訴えます。

キアラの寄稿文を今回はご紹介します。(清田)

 

https://www.we.org/stories/five-ways-adults-can-empower-youth-to-change-the-world/


私は、「若者は未来のリーダーではなく、いまのリーダーだ」とおとなが励ましてくれる環境の下で育ちました。

それは、「私だったら世界を変えられる」という想いを育むことができる環境でした。

 

このような環境に育ったため、弱冠11歳にして、私は募金集めのキャンペーン「Climbing Mountains for Girls’ Education」を始めるにようになりました。

文字通り実際に山登りをしつつ、目指す目標は不公平と言う名の山―女の子の教育を受ける権利が保障されていないという山と闘うことでした。私はWE Charity(フリー・ザ・チルドレン)がケニアで支援する2校の女子校のために資金を集めました。

募金活動を通じて、支援に必要なお金が集まるだけでなく、「女の子や女性が教育を受ける権利は人権だ」という意識が広まることを願って活動をしました。

両親や先生、地元のおとなたちが、私がリーダー・活動家になるに必要なスキルを身につけるために力を貸してくれました。

 

若者に世界を変えて欲しいと期待を寄せる人たちに、私は次の5つの重要なステップをお伝えしたいと思います。

おとなのみなさんも行動を起こして下さい。


1.世界の情勢に注目するよう若者に促す

 

世界の情勢は社会的正義への情熱をかき立てることがあります。

私が何かをしたいと思うようになったのは、ニュースでパキスタンのマララ・ユスフザイさんが銃撃されたのを知ったときでした。

彼女が教育の権利を強く訴えたため過激派グループから標的にされていたという事実は私を奮い立たせ、誰もが教育を受ける権利があると訴える活動を始めるきっかけになったのです。

テレビでマララさんの話を見ながら私は衝撃を受け、悲しくなり、世界を変えたいという衝動に駆られたのです。私が社会運動の道を歩み始めた時に極めて重要だったことは、世界の情勢に関心を持っているということでした。それは私の住む世界についての理解や、視野を広げる際に大きく役に立ちました。

おとなは、世界の情勢について関心を持つよう若者を励ましながら、彼らに社会の不公正な問題について触れさせるきっかけを作ることができます。

それが、いまの世界、あるいは未来の世界に、変化を起こすことにつながるかもしれません。

 

2.タブーな話題を無くす

 

初めて人権について興味を持った時、世界の特定の問題について議論することがしばしば避けられていることに気づきました。これらの議論は何となくタブーであったり、物議をかもしそうで、良い悪いとかいう是非を問うことも多く、政治性も絡み、一般に的に議論するのが不適切だと思われがちだからです。

しかし、こういった話題を議論しないことで、おとなは若者がこれらの重要な問題について学び関わる機会を奪っています。

私は家族から、世界のことについての知識を身につけるために、世界のどんな問題でも議論し質問をぶっつけるようにと、常に励まされていました。教育を受ける権利の問題も、その一環でした。それについて両親は、研究して議論を深めなさいと私を励まし、その問題の活動家になる道を切り開いてくれました。

このような後押しが無ければ、女性が教育を受ける権利を訴える活動を私がすることは決してなかったでしょう。

以上のような経験から、若者が世界で起きている問題について触れることのできる機会を持ち、深く勉強することができるようになるために、おとなのみなさんにも努力を求めます。

 

3.勉強だけじゃなくて、生きていくうえで大事なスキルも教える

 

学校では、若者は徹底した労働倫理、組織、自主管理など、職場の中で彼らが使う多くの重要な知識を学びます。

家庭では、料理やモラル、倫理のような実用的なスキルを学びます。でも、リーダーシップ、批判的思考力、自分の意志に従って、ときにはリスクを冒すといったようなことついてはどうでしょう?

私の場合は、常にこのようなことを促してくれた家庭に育ったため、私は自分自身の考えや計画、意見を確立することができました。このおかげで、私はリーダーとして成長し、個人としても自立することができるようになったのです。

WE Charityとのキャンペーの企画は想像以上に簡単になりました。

私はすでにこのようなことをするに必要なスキルを身につけていましたから。

若者がこれらのスキルを伸ばせるようおとなが手助けすることで、若者はチェンジメーカーとして成長していくのです。

 

4.若者が情熱を探究できるようにする

 

教室や家庭での生活はとても忙しいことがありますが、そんななかでも学校や家庭で、柔軟性を持って、若者が抱くその情熱を駆り立て探求できるようにさせることが大切です。

先生が授業の中で、資金集めの一環として、クラスメートと女平等について議論する時間をつくってくださっていなかったら、学校の人たちからの寄付を受けることもなかっただろうし、この基金集めは到底成功とは言えなかったでしょう。

そのうえ、学校で私の情熱を探求する時間と空間を与えられたことによって、私はこの活動を続けるモチベーションと、先生やクラスメートたちからの応援を得ることができました。

若者に自分の情熱を探求し学習できる時間を与えることは、彼らが計画を立てる上で力になるでしょう。

 

5.若者の大志を尊重する
 

私の人生の中で出逢ったおとなは、私の社会変革への情熱や意見、活動家としての私の活動すべてを評価してくれました。両親や先生、家族の友人の支援が私の背中を押す力となり、私は直面する全ての困難を切り抜けることができました。

私があまりにも若く、リーダーとして見られてもいいのだろかと疑問に思い怖くなったり、無力感を味わうことが度々ありましたが、その度に、私はより力強く歩むことができるようになりました。

おとなが、世界をより良い場所にしようとする私の活動を評価してくれていることを、私は知っていましたから。

若者の努力に高い評価を示してくれるおとなたちは若者が自信を持つ上で大変重要であり、「世界を変えるためにまず自分が変わろう」(ガンジーの言葉)と努力し続けたいと思っている若者の励みになることでしょう。

だから私はおとなのみなさんに強く求めます。若者が私たちの住む世界に貢献する姿への評価と、そしてリーダーとしての働きに対する評価を、たとえ一言でも言葉で示してください。

一人のおとなからの小さな励ましが、大きな助けになるのです。

 

私のこれまでの人生の中で、おとなたちが実行してくれたこの5つのステップは、活動家としての歩みの中で私には欠かせないものになってきました。

あなたが親であり、先生、コーチや地域社会に影響力を持っている人であれば、あなたの生活の中でこれら5つのステップを若者のために使って、将来のリーダーを育てるよう力を尽くしてほしいと強く望みます。


キアラ・ピカオの活動を紹介した過去の記事

 

http://ftcj.jugem.jp/?eid=2095

 

(原文記事執筆: キアラ・ピカオ  翻訳:翻訳チーム 松田富久子 文責:清田健介)
 

 

 


ヘイトクライムという名のカナダの国家的危機

クレイグとマークのコラムの紹介です。

https://www.we.org/stories/hate-crimes-national-crisis-canada/


2015年、カナダには80~100にも及ぶ白人至上主義団体があり、国中に差別的なヘイトをまき散らしていました。

この数字をみるだけでも、合理的な思考のできる人であれば、この数値は高すぎるし、異様だと思うでしょう。

わずか4年後のいま、カナダには300以上のヘイトグループがあると専門家は推定しています。

 

こんな数字を出されても何も恐怖を覚えないという人もいるかもしれません。それはそれで結構ですが、正直な話、ヘイトの広がりへの危機感を私たちと共有できるような人たちが、このコラムの読者層であってほしいなあとは思います。

 

約1カ月前、ニュージーランドのクライストチャーチのモスクを起こった襲撃事件で、何の罪もない50人の命が奪われました。

この襲撃は、2017年に起きたカナダのケベックシティーでのモスク襲撃事件に触発されたモノだと報じられています。

カナダでのヘイトクライムは、この2年間で50パーセント近く増加しています。犠牲者となるのは大半がイスラム教徒かユダヤ人です。先住民の人たちが巻き込まれる犯罪が以前から社会問題になっているという事実も確かにありますが、人種差別主義的な意図を明確に持った破壊行為や暴行、殺人が増えているという点を見れば「ヘイトクライム」が新たな社会問題になっていると言って差し支えないかと思います。

 

「カナダ社会はヘイトクライムと向き合うことに消極的になっていますが、これは国家的危機と言っても過言ではありません。」オンタリオテック大学で偏見や過激主義を研究するバーバラ・ペリーはこう言います。

 

カナダのメディアはニュージーランドの襲撃事件を報じてはいますが、カナダ国内の問題を報じ、地元で台頭する白人至上主義やヘイトクライムについてどのような対策がなされているのかを報じている報道機関はごくわずかです。

 

では、どのような対策をやっているのでしょう?私たちがみる限りでは、「たいしたことはやっていない」ようです。ケベックシティーでの襲撃事件のあと、カナダ議会の諮問会議が人種差別とヘイトクライムの対策に関する提言を作成しました。昨年に作成された提言では、メディアのコメンテーターや政治家に対して、自身の特定の宗教や人種に関するコメントが、ヘイトに関する情勢に影響を与える可能性があることを認識できるような研修の実施を提案しています

また、人種差別を誘発するような「フェイクニュース」の拡散の法的対応の強化、ヘイトクライムの操作を担当する警察への支援の拡充を提案しています。

 

この提言はいまのところ国の対策に反映されていません。

 

「政府の動きをみると、ヘイトクライムへの対策は縮小され、むしろ後退しています。」ペリーはそう言います。

 

この問題の根源を作り出しているのは、法律というよりは現場です。カナダの警察は右翼の過激主義者を脅威とは認知せず、まるで軽犯罪のように扱っています。また、既存の法律もうまく活用されていません。カナダの法律は民間人の軍事的武装を禁止していますが、白人至上主義団体は武装訓練をしている様子を堂々とSNSに投稿しています。しかし、逮捕されてしかるべき刑罰を受けている人は誰もいません。

 

法の執行の問題だけでなく、法律による厄介な規制が問題になっている側面もあります。

ヘイトクライムを検察が立件するには、法務省からの許可が必要です。(そのような規制を受けている犯罪は多くありません)また、2013年にヘイトスピーチ法が撤廃されてしまったため、暴力行為を誘発するような危険で卑劣な言動を社会から排除することが難しくなってしまいました。

 

「このような状況が、結果としてヘイトの広がりを助長しているということを、人々は認識するべきです。」ペリーはそう警鐘を鳴らします。

 

具体的な行動を取らなければ、今後もより多くの命が奪われることは確実です。

その具体的な行動とは何かといえば、白人至上主義者が社会の脅威となっていることを警察に認知させる研修を行うことです。

ヘイトクライムの捜索への支援を政府がきちんと行うということです。

また、関連する法律をしっかりと執行し、危険な行為を行った者の行為をしっかりと立件し処罰することができるように、法的規制を撤廃しなければなりません。

 

ニュージーランドでの悲劇をきっかけに、世界は行動を起こさなければなりません。もちろんカナダも例外ではありません。

ヘイトはカナダにもいまだに存在し、放っておいたら治る病気ではありません。

ヘイトは国家的危機であり、行動を起こして対処するべき社会的病理なのです。

 

 

 

 


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