科学実験に打ち込む青春

今回ご紹介するのは、科学実験に打ち込むことで自身のキャリ

アを築き、世界を変えようとしているケニアの若者です。(清田)

https://www.we.org/stories/we-villages-kisurani-group-of-schools-encourages-more-young-women-in-stem/

 

 

初めて、Mary Ngerechiが、実験室に足を踏み入れたのは、

2015年でした。彼女は、初めての実験で理科が大好きになりました。
 

この14歳の少女は、ケニアのマサイマラでWE(フリー・ザ・チル

ドレンが関わるキサルニ女子学校系列校の9年生でした。彼女

は、生物学の授業がどんなものかまったく分かっていませんで

した。これまでに一度も、ビーカーや試験管を見たこともありませんでした。
その授業の初めのころ、Maryは、ガラス器具を壊してしまいやしないかとい

う怖さで、実験室の何かに触れるのも、ためらいながら恐るおそるだったの

を覚えています。地元の小学校は、こういった設備を備えていませんでした。

当時のキサルニ校の彼女の先生のやり方は、生徒に科学のメカニズムを話

して教えるというより、実際で実際に見せて教えるというものでした。
 

その授業は、ある実験で始まりました。それは、還元糖を検出す

るベネディクトテストです。先生は、試験管にサンプルを入れ、溶

液を沸騰するまで加熱しながら、各段階をゆっくりと見せてくれま

した、。魔法のように、試験管の中の色が薄い青色から緑がかっ

た色に変わり、それから黄色になり、さらに、くすんだオレンジ色

になり、最後に、濁った赤色になりました。この変化を見た後、生

徒たちは、この実験を繰り返すよう求められました。


注意深く、Maryは、手順を繰り返し、色が生じてくるのを目に

しました。同時に、それが自分の操作によるものだということ

を理解しました。彼女は、驚きのあまり呆然としながらも、何

も壊れなかったことにほっとしていました。
 

それから3年、Maryは、科学に魅了された12年生になり、あ

の実験室での初日にそうだったように好奇心旺盛です。彼

女の情熱は、自分がこれまで実験を何度やってきたか数え

られないほどです。その数は、おおよそ数百回に上ると、彼

女は言っています。
 

新しい実験の度に、Maryは、自信と技術を高めてきました。こ

の分野に熱心に取り組むことで、彼女は、キサルニ校の優秀

なサイエンス・スチューデントの一人になるという高い評価を

得ました。彼女は、しばしば、先生からクラスの実験を指導す

るように声をかけられ、その間、他の生徒たちは、彼女の実験

パートナーを務めることになります。
 

Maryは、科学の最も好きなところは何かと問われると、実践的

な答えを返します。はっきり言うと、彼女は、科学のテストでは、

経験的な分野に優れる傾向があります。彼女はこう言います。

「科学は、私にも理解できるものであり、原理的な手法を理解す

るのは難しくないし、一度習えば、絶対に忘れません。」
 

 

 

Maryは、最初に自分を虜にした実験を私たちに見せてくれます。

彼女は、注意深く、青い液体(ベネディクト反応液)を試験管内の

グルコース溶液に加えて、加熱します。それが、最終的な赤の色

合いになると、彼女は、溶液中に還元糖が存在すると結論します。

彼女が説明するように、溶液中のグルコースが酸化されて、カルボ

キシル酸になったのです。「私は、この色の変化はなぜ起こるのか

が分かっています」と、彼女は微笑んで言います。いまや、このよう

な専門用語が、彼女の口からすらすらと出てきます。彼女の語彙の

中にある普通の表現です。
 

Maryは、科学が大好きです。でも、彼女は、この分野でのお手

本となる人がいないことを分かっています。彼女は、もしチャン

スがあればと、実験室に入りたがっているかもしれない他の少

女たちのことを考えざるをえません。彼女にとって、キサルニ校

は、熱中できることを見つける機会を与えてくれました。この学

校がなければ、こんな素晴らしいことを知ることはなかったでしょう。
 

Maryのような、科学、技術、工学、数学(STEM)分野に強い関

心を抱く女性・女子生徒のためのメンター(助言者)は、マサイ

マラではごくわずかしかいません。これは、STEMに興味を持つ

この地域の少女たちが直面する課題になっています。
 

それでも、メンターは存在します。


キサルニ校では、教員たちは、メンターシップと動機付けが

STEMに生徒を導く道であると信じています。
 

Philes Kebasoは、こういったメンターの一人です。彼女は、自分

の生物学クラスに来た生徒たちを歓迎し、熱意をもってその日の

授業を始めます。Maryは、善きにロールモデルとして、彼女を真

っ先に挙げます。一方、Maryのような生徒の存在は、先生の意

欲を高めます。Philes先生は、「自分が、こういった生徒に影響

を与えているということを実感できるのは、とても幸せです」と、

声を弾ませます。
女性メンターであるPhiles先生は、女子生徒たちがSTEMに意

欲的に取り組んでいると思っています。まずは、彼女らが、質

の高い教育を受けられるようにしなければなりません。彼女は、

女子生徒たちの理科へのやる気に火をつけるためには、十分な

実験室を備えるべきだという、キサルニ校で掲げる教育的方策を

信頼しています。「生徒のほとんどは、各自の家庭の中で初の高

校生となったのが始めてというだけではなく、こういう設備の整っ

た環境で学ぶというのも、初めてなのです。」と、彼女は語ってい

ます。私たちは、「STEMの分野で十分に経験を積ませてやりたい

と思っています。「いまの女子生徒たちは、他の年少の女子生徒

たちにとって、お手本となる世代です。」
 

教室外でも、Maryは、学校の科学クラブに所属しています。そこ

で生徒たちは、科学に関する話題を探求する機会を得、多くの

実験を通じて自分たちの知識を高めています。そこでは、Mary

は、立派なメンターです。新しいメンバーを指導し、年少の生徒

たちの宿題を手伝っています。
 

将来について聞かれると、Maryは、高校卒業後は科学の分野

に進むつもりだと明言します。彼女の夢は医者になることです。

その理由はいたって単純です。彼女は、これまでに、自分の住

む村から医学課程に進んだ女子生徒は誰もいません。「私がそ

の最初の女性になりたい。そうすれば、村の女子生徒たちも、や

れるということが分かるでしょう。」

 

(原文記事執筆:セディ・コスゲイ 翻訳:翻訳チーム 山下正隆

文責:清田健介)

 

 


兄から託された想い、そして後輩に託す想い

フランンシス・ナイモデゥの兄は、弟の可能性を信じて、フラン

シスが一歩を踏み出すことを後押ししてきました。そんな兄の

想いを受けたフランシスはいま、後輩を後押ししようとしていま

す。(清田)
 

https://www.we.org/stories/all-boys-high-school-in-kenya-maasai-mara-adopts-mentorship-program/

 

 

1月の火曜日、暖かい朝を迎えました。10年生(高校2年)

のフランシス・ナイモデゥは、ケニアのマサイ マラ村のネグロ

ット男子高校の管理ブロックの近くに立っています。この日は

入学日で、彼は数人のクラスメートと共に、高校生活の第一

歩を印す9年生(高校1年)の新入生を今か今かと待っている

ところです。

 

彼は、ネクタイを正し、シャツにぴたっと付け、制服のセーター

を手で軽くはたきます。これから彼の「息子」に会うところで、第

一印象がすべてを決めるからです。

 

フランシスと同級生は、学校が新設した父―息子の指導プ

ログラムの一員なのです。10学年の上級生(父親)には新入

生(息子)の助言者となる仕事が課せられています。「父親」

役就任早々しなければならないことは、新入生が学校生活

の初日をうまく乗り切れるように手助けをすることです。

 

フランシスの「息子」の名は、ザドック・ キベット。彼は一番

乗りの生徒の1人ですが、実際の父親に付き添われて来ま

した。まず気づいたことは、他の生徒たちが自分と比べて何

と背が高いんだろうということでしたと、ザドックは言います。

初日の準備をしながらザドックは、背の高さのために皆にか

らかわれるのではと心配していました。彼は高校でのいじめ

の話をいろいろ聞いていたのです。

 

ザドックは名前を告げて、学校での「父親」に紹介されまし

た。その人が見上げる程だったのは驚くことではありません。

 

フランシスは、初日に不安になることをよく知っているので、

この指導プログラムについてザドックと父親に説明しました。

フランシスは、自分が受け持つ新入生に、心配することは全

く何もないよと力づけました。僕が見守ってあげるからと。

 

 

フランシスは、良き相談相手、そして、お手本に出会うこと

の大切さを知っています。

 

彼がいま高校にいられるのも、もともとは兄のおかげなので

す。フランシスは5人兄弟の3番目の子どもとして生まれまし

た。両親は彼が幼い頃に他界しました。彼ときょうだいを育

て上げてくれたのは長兄でした。

 

フランシスが8学年を終了した時、兄には彼を高校に行か

せる余裕はありませんでした。家族の中で誰ひとりとし

て高校に行った人はいませんでした。そんな時に、マサ

イマラ村で新しい男子高が開校したのです。WE(フリー・

ザ・チルドレン)の支援で設立されたこの学校は、WEがキ

サルニ女子学校ですでに女子高の生徒に実施していると

同じように、奨学金の全額給付制度を創設しました。これ

らの女子高はこの地域でこのような制度を設けた最初の

ものでした。そしていま、この最初の男子高でも、男子生

徒に同様の機会が与えられることになったのです。

 

フランシスの長兄は、マサイの社会の中で、これまでにない

新たな人材が求められていて、これからの時代を生き抜くた

めには、教育が重要であることを理解していたので、フランシ

スに学校に志願するよう強く勧めました。この誇り高き弟は断

言します「兄はいつも、僕たちきょうだいには最高の人になる

ための可能性を秘めた素質が備わっていると、確信していた

のです」。

フランシスは発足したばかりのクラスの一員になりました。

ネグロット高校のプログラムに参加した時、フランシスは兄

の熱心さに見習いたいと思いました。2年目を迎えた今、彼

は兄のように立派なおとなになる道を着実に歩んでいます。

「もっと自信が持てるようになりました。いまは僕と同じような

若者に気楽に声をかけ、学校でただ勉強しているだけでなく、

一所懸命勉強しなさいと励ますことができます」と彼は熱心に

訴えます。「父―息子」プログラムは、彼が兄から受けた助言

の仕方を後に伝えて行く良い機会になるだろうと、彼は言います。

 

 

 

このよき指導者プログラムだけが、ネグロット男子高校の唯

一の新しいものではありません。2017年1月の正式開校一周

年の祝賀と同時に、キャンパスが拡張してきました。新しい教

室、新しい寄宿舎が建ち、それに新たに教育の助手が何人か

採用されました。この人たちは、通常の授業に加えて正課外の

授業もしなければならず多忙でした。

 

ネグロット高校の一周年記念日にはこれらの変化が目立ち

ましたが、最も画期的な出来事は、マラ地域からさらに33人

の男子生徒が高校の教育を受けられる機会ができたことです。

 

「父―息子」プログラムによって新入生が不慣れな環境に

移行するのが容易くなると、ゴドフレイ・ケプシロル校長は

説明します。更に付け加えて、このプログラムはまた、全て

の生徒にとって、彼らが成長して自信に満ちかつ思慮深い

若者に成長していく過程で、お互いに学び合う良い機会に

なるとも言います。
 

フランシスにとって、学校に環境部を作って―そして部長に

なること―が、9年生(高校1年生)の時から心に秘めていた

目標の1つでした。部員が木や草花を植えて校庭を常に爽

やかで美しくしている姿から、フランシスは忍耐強くいること

と、環境に敬意を払うことの大切さを教えられました。

彼の新しい「息子」が、ネグロット校の自然環境は本当

に青々としていますねと語ったとき、満足感で胸がずき

ずきしたのも不思議ではありません。彼は、ザドックが

このクラブの新しいメンバーになってくれればと希って

います。

 

(原文記事執筆:セディ・コスゲイ 翻訳:翻訳チーム 松田富久子 文責:清田健介)
 

 

 


尊敬する祖母への手紙

今回は、キサルニ女子学校のジャーナリズム部の部員マー

シーが、祖母(現地語ではゴゴ)に宛てた手紙を紹介します。

祖母は、孫であるマーシーにとってかけがえのない家族であ

り、教育を受ける権利の擁護者としても心強い存在です。(清田)
 
https://www.we.org/stories/female-student-in-kenya-writes-letter-to-grandmother-for-journalism-club/


 

親愛なるゴゴへ

 

ゴゴは、私の一番の人生のお手本です。

長期休暇に帰省したときはいつも、ゴゴの育ちや今まで

の話を聞かせてくれてありがとう。11歳で割礼と決められ

た結婚をさせられた時の話を聞くと、いつも泣きそうになっ

てしまうのだけど、ゴゴは本当にすごい人だなと思うんだ。

 

割礼と結婚の日程が決まってから、ゴゴは何度も逃げよう

としたんだよね。でも、お父さんに家の中に閉じ込められて

しまった。そして次の日に、老女が家に来て全ての儀式を

執り行ってしまった。ゴゴは途中で何度も、やめてほしいと

お父さんとお母さんにお願いしたのに、聞き入れてもらえな

かったんだよね。

 

割礼が行われてすぐに、ゴゴは2倍ほど歳の離れた男の人

と結婚させられた。一晩中泣いたんだよね。16歳で私のお

母さんを産んだとき、娘には自分と同じ道は歩ませまいと

誓った。

 

お母さんには教育を受けさせようと心に決めた。十分なお

金があったわけではなかったけど、少なくとも小学校卒業

まではと、頑張ってくれたんだよね。お母さんは中学には

進学しなかったけれど、ゴゴと同じように教育を受ける大

切さは感じたみたい。だから、お母さんもまた、私には中

学まで進学させようと思ってくれた。

 

ゴゴに、私がキサルニ女子学校に合格したと報告すると、踊っ

て喜んでくれて、プレゼントまでくれたよね。

 

ゴゴは、学校について色々聞いてくれる。いつか実際に学

校に来て、様子を見てもらえたら嬉しいな。それまでは、学

校って本当に素晴らし場所だってことを、私がゴゴにしっか

り伝えるね。学校の中で、一番のお気に入りの場所は図書

館。授業はどれも面白いよ!特に好きな教科は英語。ジャ

ーナリズム部で活動していて、とてもいい経験をさせてもら

っています。

 

こんなに素晴らしい学校に進学させてくれて本当にありがと

う。お母さんが私の教育に熱心になってくれるのも、ゴゴの

おかげです。

 

あなたの孫
 

マーシーより


(原文記事執筆: マーシー・チェプコエチ 翻訳:翻訳チーム 
藤井優美 文責:清田健介)

 


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