世代を越えて受け継がれていくビーズ細工

マサイ族の女性たちによって伝承されてきたビーズ細工の

伝統工芸。いま、この長年受け継がれてきた伝統を生かし

て、新たな未来を切り開こうとしている女性たちがいます。(清田)

https://www.we.org/stories/artisans-turn-maasai-tradition-into-sustainable-income/

 


 

何日かに一度、ネイタララ・ナバラは家の外に出て、容器

に入った色とりどりのビーズを毛布の上に広げます。そこ

にお母さんのナシル・ダパシュが加わります。この親子の

時間は、ケニアのマサイ族の文化の一部です。
 
ネイタララとナシルは一緒に、明るい色のビーズできれいな

ネックレスを作ります。愛とともに身につけられるこのネック

レスは、ラフィキという名前で世界に知られています。

 

2人がビーズ細工を作るときは、ぴったりと息が合っていま

す。長年一緒に作業してきたおかげです。ビーズをすくい

上げて、透明な糸に(いとも簡単そうに)通す彼女たちの

動きは、お互いよく似ています。最初の数分間、親子の

農場には沈黙が訪れ、トレーの上のビーズがサラサラと

立てる音だけが聞こえてきます。2人は、一度リズムをつ

かむと、手を動かしつつおしゃべりをします。複雑なデザ

インのネックレスを1本完成させるのには、大体10分かか

ります。陽気なネイタララは言います、「眠りながらだって

作れますよ」。

 

初めてビーズのネックレスを作ったとき、ネイタララは12歳

でした。ビーズ細工のやり方は、母親のナシルから教えて

もらいました。そしてそのナシルも、彼女の母親から作り方

を教わったのです。家族が覚えている限りでは、女の子は

みんな母親からビーズ細工のやり方を教わっています。マ

サイ族の女の子にとって、ビーズ細工を学ぶのは習慣であ

り義務なのです。そしてビーズ細工を学ぶことは、マサイ族

の文化継承においても重要なことです。

 

ビーズ細工はマサイ族の文化を象徴しています。美や伝統、強さ、

時には社会的地位をも表します。「女性はグループで集まって、男

性も女性も行事や儀式で身につけられるようなビーズのアクセサリ

ーを作ります」ナシルは言います。「ビーズは美しさの象徴です」。

 

しかし今の世代の人々にとっては、ビーズは必要不可欠な

新しい役割を果たしています。長い間牧畜をしてきたマサイ

族にとって、唯一の収入源は家畜でした。家族の生活を維

持するために、家畜を売り、さらには牛とヤギのミルクから

の収入も当てにしました。しかし、暑くて雨の少ない気候は

牧草地に悪影響を与えました。干ばつによって土地では何

も作れなくなったので、マサイ族は民族内の女性に目を向

けました。そして、再び利用したのがよく知られた伝統でし

た。そう、ビーズ細工です。
 


子どもを産むと、生活の維持はネイタララにとって急を要す

る問題になりました。収入を得る方法を探さなければならな

かったのです。それまでのネイタララの家族の唯一の収入

源は、牛乳を売って得たお金でした。子どもたちに食べ物

や服を与えて学校に行かせるためには、牛乳からの収入

だけに頼ってはいられない、そう彼女は悟りました。そこで

ネイタララは、新しい方法を生み出しました。

 

ネイタララとナシルは、ビーズ細工を友だちや近所の人に売

ることにしました。しかし、そうして得られた収入は限られてい

ました。村のみんながビーズ細工をしていた上に、市場が遠く

離れていたので、売る機会は少ししかなかったのです。供給量

に対して需要がありませんでした。

 

WE(フリー・ザ・チルドレン)がタンザニアのマラ州で事業を

始めたとき、何百人もの女性がこの難題を持ち込みました。

そのため、協議と計画を経て、女性エンパワーメントセンター

がナロク郡に設立されました。センター内では、女性たちが集

まってビーズ細工を作り、作品を販売する市場を海外にも開拓

するようになりました。今では、何百人もの女性たちが、センタ

ーでビーズ細工をすることで収入を得ています。さらに、ネイタ

ララやナシルを含む数百人は、家でビーズ作品を作ってセンタ

ーに持ってきています。今までのところ、1400人以上の女性た

ちがビーズ細工で生活費を稼ぐことができています。

 

ネイタララは、ラフィキが人生にもたらしたいちばんの影響は、

5人の子どものうち4人が教育を受けられるようになったことだ

と言います。末っ子はまだ学校に行き始める年齢ではありま

せんが、ビーズ細工で稼いだお金があれば、学費の支払い

に関して問題がないということはわかっています。

 

一方、ナシルは、ラフィキを作って得た収入で大きな家を建

てました。ナシルは言います、「私の家に来る人は、私みた

いな年を取った女性がどうしてきれいな家に住んでいるの

か不思議がっているんですよ!」

 

ネイタララもナシルも、年をとってもビーズ細工を続けたい

と思っています。慣習に従って、ネイタララはビーズ細工の

技術を娘たちに伝えました。娘たちは時々ビーズ細工を手

伝ってくれますが、娘たちには学校を最優先にしてほしい、

とネイタララは言います。「ビーズは私たちの伝統の一部だ

けれど、娘たちは学校に行かなければなりません。娘たち

には、伝統を受け継ぐだけのこれまでとは違う、可能性に

あふれた人生を歩んで欲しいのです」。

 

(原文記事執筆:セディ・コスゲイ 翻訳:翻訳チーム 明畠

加苗 文責:清田健介)