チョコレートで建てられた学校

エクアドルのチョネ村に開校した新しい学校。この学校は、

WE(フリー・ザ・チルドレン)が村で行っているチョコレートの

フェアトレード事業をきっかけに建設されました。(清田)

 

https://www.we.org/stories/fair-trade-chocolate-gives-education-in-ecuador/

 

 

 

エクアドルのチョネという村で新しい教室のグランドオープニ

ングセレモニーが行われる前日、その学校の校庭にさびつい

たトラックがバックで入って来ました。荷台にはオレンジ色の椅

子、セロハンに包まれた机や真新しいホワイトボードなどが積

まれ、エクアドル沿岸の太陽の下、生徒たちの授業が終わる

まで、荷降ろしの時を待っています。

 

教師のガブリエル・イヴァン・ヴェルドゥガが終業のベルを鳴

らすと、即席のミンガ(訳注:エクアドルの伝統的な住民間の

結束による共同作業)が始まります。ミンガが呼びかけられ

ると、村のために教室建設プロジェクトの完成を手助けしよ

うと、男性、女性、子どもたちが協力し合います。

 

グレーと白の制服を着た生徒たちがトラックに集まってきま

す。何人かが荷台によじ登り、他の生徒は後ろの方に並ん

でちょっとした組立ラインができ、からっぽの教室に机や椅

子を協力しながら運んでいきます。そうすることで、子どもた

ちは古くからエクアドルの人々が伝統的に行ってきた共同作

業、ミンガに無意識のうちに加わっているのです。「WEのプロ

ジェクトがこうした共同作業の精神を呼び起こしてくれました。」
生徒たちがトラックの荷台から下で待っているクラスメートに机

や椅子を降ろしているのを見て、イヴァンは人懐こく微笑みまし

た。生徒たちからはイヴァン先生と親しまれていて、実年齢は

35歳ですがもっと若く見えます。

 

生徒たちはちょうど数週間前、自分たちの両親がショベル

を手に取り、岩を取り除き、セメントを混ぜて教室を作るの

を見ていました。今、生徒たちは、両親が始めた作業を完

成させようとしています。それはイヴァンにとって、変化を

目指す彼の思いを村全体が分かち合っていることの証でした。

 

 

 

チョネ村は富裕層向けのビーチリゾートの玄関口に位置し

ています。自給自足の生活のため、収穫が豊富なときはよ

いのですが、川が氾濫したり、逆に雨がなかなか降らない

ときは、食べるものに困ることもあります。2017年9月、WE

はチョコレートで有名なFino de Aroma(訳注:コロンビア産

カカオ豆)とその多様なカカオ豆から作るチョコレート製品

のフェアトレードと持続可能な開発事業によって、エクアド

ルのために何ができるかに目を向け、チョネ村を訪れまし

た。この有名なカカオ豆によりME to WEのフェアトレード・

チョコレートが作られ、この教室建設に一役買ったのです。

 

チョネ村のカカオ農園と協力するにあたり、WEの開発事業

の専門家は村びとと一緒に計画を立て始めました。当時W

Eとチョネ村との新しいパートナーシップを進めていたイヴァ

ンによると、プロジェクトをすすめていくにあたりまず最初に

着手するべきものこそ、設備の整った学校の建設でした。

 

チョネ村は大西洋の波が打ちつける海岸線に近い内陸に

位置しており、学校の周囲は丘状になっていて冷たい沿岸

の風の吹き溜まりとなり、広大なカカオやバナナの畑に多

量の温かい雨を降らせることにより、このあたり一帯は絵

に描いたような青々とした緑になっています。そのような美

しい景観のために村びとが直面している問題を見過ごし

てしまいがちですが、その必要性は重要なものなのです。

 

チョネ村では、最近になってやっと一部だけ舗装路がつな

がりましたが、多くの家は長く伸びる荒れた未舗装路のた

めいまだに孤立しています。週に一度きれいな飲み水を運

ぶトラックが来ます。舗装路の近くに住んでない人たちは雨

の日に水を貯めたり、川の水を汲んで来たりしなければなり

ません。もちろん処理されていない水です。学校は過密状態

で設備も不十分です。高学年の生徒たちは近くのアタカメス

という町までバスで通学することが求められていますが、お

金がかかるため多くの生徒が退学を余儀なくされています。

 

イヴァンにとって、WEとのパートナーシップは「教育不足の

連鎖を断ち切るチャンス」であり、新しくできる教室は「最重

要使命」となりました。先生であり牧師でもあるイヴァンは、

エクアドルの農村の教育の現状について熱く語ったかと思

うと、ふいに、遠くを見つめたり、あるいは直接目を見つめ

て、彼自身の過去について控えめに語り出しました。

 

 

 

イヴァンはアタカメスの出身です。アタカメスはチョネの村か

らは車で45分ほどですが、高層のホテルが白砂のビーチに

立ち並び、遊歩道には新鮮なロブスターを味わうことのでき

るセビーチェ(訳注:生魚のマリネ)の屋台が並び、チョネ村

とは別世界の様相です。

 

彼は教育によって開かれる道があることを自ら経験しました。

イヴァンの母親は教育を受ける機会がありましたが、彼の父

親は教育を受けませんでした。年をとってから母は小学校の

先生になり、父は彼女の成功をとても誇りに思っていました。

両親はイヴァンに必ず学校を卒業するように言い聞かせまし

た。「私たちはずっと貧しいことで制約を受けてきて、苦しんで

きました。」イヴァンはスペイン語で説明します。
「でも今はもう貧困の連鎖には囚われていませ

ん。私は生徒たちや、彼らのニーズ、彼らの夢

に昔の自分を重ねています。」アタカメスにいる

イヴァン自身の子どもたちは設備の備わった

十分に資金のある学校に行くことができてお

り、彼は同じようなチャンスをチョネ村の子ど

もたちにも叶えてあげたいのです。

 

WEとの連携により、村は教室建設を実現するべく行動を起

こしました。WEとエクアドルの村との間に真のパートナーシ

ップを確立させるために、またの村人にプロジェクトに対す

る当事者意識を持ってもらえるように、村からも必要な備品

を少しずつ提供することにしました。カナダやアメリカの学校

でWEの募金活動をしているように、そこにエクアドルのエッセ

ンスを加え、チョネ村の生徒と保護者でベイク・セール(訳注:

お菓子などを手作りして販売するバザー)を催し、セメントや竹

材を調達するための資金を集めました。ベイク・セールによくあ

るクッキーやブラウニーではなく、エクアドル風に、エンコカード

(訳注:魚介のココナッツソース煮込み)に使うすりつぶした新鮮

なココナッツや、タマル(訳注:トウモロコシ粉を練ったものとひき

肉、トウガラシなどをバナナの葉などに包んで蒸したもの)に使う

トウモロコシの粉や、伝統的なコルビーチェ(訳注:緑色のバナナ

と魚をまぜて成形したコロッケのようなもの)に使うバナナの詰め

物などを提供しました。ラッフル(訳注:資金集めのためにくじなど

が付いたチケットを販売すること)を主催して近隣の村からも参加

してもらいサッカーの試合をしたりしました。イヴァンの子どもたち

もジュースやソーダを売るのを手伝いに来てくれました。

 

そしてミンガの精神もありました。フェアトレード事業を通じ

てME to WEチョコレートにカカオ豆を供給しているカカオ農

家の方々も、学校建設を手伝いに来てくれました。その売

上資金はエクアドルじゅうのこうしたプロジェクトに提供され

ています。学校建設の初日、当日の朝にはこの村からたく

さんの人が手伝いに来てくれて、シャベルの数が足りなくな

るほどでした。保護者が土地をならし、イヴァンは参加者が

交替で作業できるようスケジュールを組みました。「作業は

着々と進みました。愛する子どもたちのために。」と笑うイヴ

ァンの顔には大きなえくぼができました。
 

 

 

2018年1月にグランドオープニングを迎えました。前日まで

生徒たちが新しい教室に机や椅子を運び入れるのを見て

いたイヴァンは入口の横に立ち、来てくれた人たちをとても

嬉しそうに迎え入れています。村のリーダーや先生方だけ

でなく、教育省からは政府関係者も参加してくれています

が、出席者の中でもイヴァンが最も誇りに思っているのは、

直接建設に携わってくれた保護者たちでした。自分たちで

建設作業を手助けした新しい教室で、子どもたちが運んでく

れた椅子に座っています。新しい教室はゆったりして、防音

屋根や空調設備も備わっており、生徒たちは激しい雨の日

でも焼けつくような暑い日でも勉強ができるのです。

 

「今日はお祝いの日です。」イヴァンは、グランドオープニン

グに集まった観衆の前でスピーチしました。保護者たちの頑

張りと、村のサポートと、先生方の献身をみんなで称えあい、

そして何よりも、村の来と新しく生まれたWEと村とのパートナ

ーシップによって今後もたらされるものを祝福しました。「この

プロジェクトによってこれからも引き続き多くの節目を迎えるこ

とでしょう。」

 

これから子どもたちがより良い教育を受けることができると

確信しながら、保護者たちは教室からぞろぞろと出てきまし

た。彼らが通り過ぎたそばには、もう一つ教室を作るための

セメント袋や竹材が積まれています。エクアドルではこれら

の材料によって、夢を叶えることができるのです。

 

祝典が終わり、明日この教室は、教科書のページをめくる

音、ホワイトボードに文字を書く音、不安な生徒を励ます先

生の声など、学びの音であふれているでしょう。チョネのカ

カオによって建てられたこの教室は、教育の記念碑として

カカオ畑の中に静かに立っています。イヴァンは教室のド

アを閉めて、言いました。「この目に映るものが愛おしいで

す。心を打たれます。すばらしい教室です。」

 

(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ 翻訳:翻訳チーム 山

本晶子 文責:清田健介)