【コラム】 希望無き人々に希望を

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのパートナー団体であり、フィリピンで活動を行うプレダ基金の運営を行っている、シェイ・カレン神父が執筆したコラムをご紹介します。
https://www.preda.org/fr-shays-articles/bringing-hope-to-the-hopeless/

 

今アイルランドで新作の映画『Black ’47』が上映されています。

これは1847年、アイルランドがイギリスの占領下にあった時代の話です。

当時、主食であったジャガイモは菌に侵され、土の中で腐ってしまったのです。大規模な飢きんがアイルランドの貧しい人々を襲ったのです。およそ100万人のアイルランド人が餓死し、100万人がアメリカに移住し、そして建国を支えました。

 

映画は1人のアイルランド人男性の話です。彼はアフガニスタンでの戦闘の後、イギリス軍から脱走し、アイルランドへ戻りました。そこで家族のほとんどが死んだことを知ります。イギリス人の大家に追い出され、餓死し、あるいは凍てつく寒さで凍死しました。さらなる立ち退きから親族を守ろうとしますが、この男性は逮捕、投獄されてしまうのです。

 

彼は脱獄し、正義を求め復讐に走ります。

復讐のターゲットは迫害者であり、人々が餓死している最中に何トンもの食物や穀物をイギリスへ輸出していた者たちです。完全なる貧困に陥り、奪い取られた土地や家屋敷で奴隷として無給の労働を強制されたアイルランド人たちは、常に空腹の状態で暮らしていました。

 

この映画は過去の世界を映し出していますが、まるで、今の時代のイエメンの貧しい人々やミャンマーの民族浄化に苦しむヒンギャの人々、エリトリアやシリア出身の難民、ミンダナオ島のルマド人を見ているようです。

彼らのいる場所では、正義や平和、思いやり、自由そして尊厳は奪われ、否定されています。

正義や平和、思いやり、自由、尊厳というものは、我々が当たり前に思っている理想であり価値観であると同時に、なくては生きていけないものなのかもしれません。

 

迫害され、空腹で、餓死寸前の人々が日々苦しんでいる貧困に、「果たして自分たちなら耐えられるのだろうか?」

私たちは今このような文章を読みながらも、そんなことを真剣に考えることはまずないでしょう。

 

しかしながら何百万もの人々が、私たちには想像もつかない苦悩と迫害に苦しんでいるのです。アイルランドの「じゃがいも飢きん」の時代に起きた残酷な行為とアイルランド人の苦悩を描写しているこの映画によって、何百万もの人々が、今日、何に苦しんでいるのかを理解することができます。

飢えに苦しむ人々や見捨てられた人々、不当に投獄されている人々や障がい者、虐待を受けている人々に対する気遣いや思いいやりの中にある価値、そして彼らのために正義と自由を求める愛は、人間が存在する目的や意味を与えてくれる究極の目標です。実行しなければ、得ることはできません。

 

排除と搾取、そしてどのような方法であろうとあらゆる形の奴隷制度は、真の意味において我々が人間らしく存在するために必要なものを奪います。

つまりそれは、自ら考え行う自由な選択です。我々を他のあらゆる生物と区別するこの類稀な特性が奪われ、取り上げられたとき、我々人間の尊厳はないがしろにされ、権利は否定され、人間以下の存在として扱われるようになるのです。
 
だからこそ人身取引業者によって強いられる監禁や虐待は、人間性に計り知れない負の影響を与えます。

何千人もの子どもたちや若者は今も奴隷状態に置かれています。彼らの自尊心は奪われ、生きようとする意志は弱められます。

 

自殺に走る子どもも多いです。

貧困や空腹、強制労働に縛られ、選択の自由もなく、自由意志を行使し、自分自身のためにどこで、どのように生きて行くかを決める自由もなく、ぎりぎりの状態で生きています。

そのような状況下で、人々は大きな苦しみや苦痛を強いられることになるのです。

そうした何千人もの子どもや若者を救うために善意の人々が行動を起こせば、彼らが抱えるそのような苦しみを終わらせることができます。

 

12歳と14歳の姉妹JessaとJadeは両親に捨てられ、心ない遠い親戚に預けられました。

人身取引業者は2人を食べ物やお菓子、小遣いで誘い出しました。姉妹は外国人と部屋で「遊ぶ」ことを強制されました。

この男はアンヘレス市などに長期滞在していたセックスツーリストです。子どもたちに対する性的虐待の疑いがかかっていました。

 

子どもたちのことを心配した近所の住民が状況を知り、すぐにプレダのソーシャルワーカーに通報しました。

2人は救出され、性的虐待を受けた女の子たちを安全に保護しているプレダホームへやってきました。姉妹は回復し、今は安心して幸せに生活しています。

そして自分たちの身に起きたことを話すことができるようになりました。彼女たちは自らの意思で虐待者を告訴することを選び、男は裁判所での尋問に答えなければならない状況にあります。

すべての人々に子どもたちを救い、守ろうとするこのような思いがあれば、世界はもっと幸せで、良いものだったはずです。

 

何十万もの若い女性たちが、その多くがフィリピン人ですが、奴隷状態に置かれ、商業的な性的搾取を受けています。

借金の罠にはめられ、そして暴力を振るわれ、性的に虐待されることに対する恐怖と脅しによって生きる力を失っていくのです。多くの場合性産業で、若い女の子たちは無給で、自由のない状態で働かされているというのが今日の奴隷制度です。

フィリピン当局はこれを容認しているのです。

 

ヨーロッパや北米では、様々な職種の中にこうした女性たちを見ます。美容院やネイルサロン、マッサージ店、売春宿などです。

もし言うことを聞かなかったり仕事をしなかったりしたら、人身取引業者たちは自分たちの家族に危害を加えるかもしれません。彼女たちはそうした恐怖と脅迫の中で生きているのです。

 

人間を奴隷にするための人身取引は、多くの国々で見て見ぬ振りをされるか、軽く扱われることが多いです。

アイルランドとイギリスの新たな法律は、人身取引の被害にあった人々を支えの必要な被害者として対応し、法的支援を提供することを関係機関に求めています。

何千ものさらなる被害者を救出するためにも、やるべきことはまだまだあります。

 

2,000万人もの人々が来る日も来る日も、無給の強制労働を目的に取引され、長期間苦しめられているのです。

逃げ出す者もいれば亡くなる者もいます。救出され自由の身となる者もいます。同じ人間を奴隷にし、自由な選択も自由もない状態で彼らを搾取することで生み出される富への欲望は、人生を破滅させます。

 

こうした状況には気が滅入りますが、子どもや若者を人身取引業者の手から救出し、そのような業者たちを裁判にかけるための動をしている善意の人々やボランティア、関係組織、NGO、真面目な捜査官が世界中に何千人もいることは知るに値することです。


プレダ基金は2018年だけでも、児童虐待者と人身取引業者に対して13件の有罪判決を勝ち取りました。多くの子どもたちが救出され、教育と治療を受けることのできる健康的で、有意義な生活を取り戻しています。

そして、人身取引業者や虐待者に対する訴訟を起こせるまでになっています。

 

ですが、私たちに救い出してもらうことを待っている子どもたちがさらに大勢存在します。

だからこそ関心を持って、この記事を紹介したり、ボランティア活動に参加したり、プレダ基金に寄付をするなどして、自分たちにできることをしてほしいと思います。

 

(訳者: Mikikoさん)

 

カレン神父とプレダ基金の子どもたち