ノートルダム大聖堂の火災から考える、私たちの歴史との向き合い方

クレイグのコラムの紹介です。

 

https://www.we.org/stories/craig-column-protect-heritage/

 

1925年に、カナダのエドモントンに建てられた鍛冶屋さん。

ここには、そびえ立つ塔もなければ、ステンドグラスの窓もありません。

レンガ式の外観は、ノートルダム大聖堂とは全く異なります。

それでも、地元の人にとっては大事な宝物なのです。

この鍛冶屋もいま、次世代に残せるかどうかが見通せない状況となっています。

 

4月、世界の人々がノートルダム大聖堂の火災に衝撃を受けました。

多くの人々が身内が亡くなったかのように悲しみ、喪失感を覚えました。

「ノートルダムのためにできることをしなければ」という想いに駆られていました。

 

ノートルダムの再建に必要なお金の寄付は既に充分に集まりましたが、その一方で、「世の中の歴史観が、あまりにもヨーロッパ中心主義に偏っている」とし、一連の動きを批判的に評する識者もいました。

簡単に言えば、「世界にはノートルダム以外にも危機に瀕している場所や芸術がたくさんあるよね」という指摘です。

ノートルダムの火災を見て、「歴史的に貴重なモノを守らなきゃ」と思ったカナダ人は多いですが、それを言うんだったら、助けを必要としている地元の宝物にも目を向けてもらいたいなと思いますね。

 

1970年から2000年にかけて、カナダの遺産といわれてきた建物や場所は2割消滅しました。

ショナルトラスト・カナダの試算によれば、この数値はいまでは4割程度になっている可能性があるといわれています。

 

「火事が突然発生して歴史的遺産が姿を消すということは実は滅多にありません。多くの場合は、人々がその遺産を大切にしなかった結果として消える場合がほとんどです。」

ナショナルトラストのクリス・ウェイブはそう指摘します。

 

先ほどご紹介した鍛冶屋さんの場合は、建物が民間の開発業者に所有されています。

この鍛冶屋さんに限らず、多くの民間の開発業者は、「古い建物は壊して、オフィスやショッピングモールに建て替えたい」と考えています。

また、公的に所有されていたとしても、放置されていたり、資金不足で維持が難しくなるケースが少なくありません。

このような現状を改善するために、私たちには何ができるでしょうか?

 

ナショナルトラストのような遺産保護の活動を行っている組織、地域で保護活動を行っている団体などは、常に寄付を募っています。場所の復元や掃除のする際にボランティアを募っていることもあります。

また、あなたの地元の地方自治体に対して、民間の開発業者による歴史的価値のある建物の破壊行為を止めるために、歴史的価値のある建物の再利用を、民間の開発業者に義務付ける条例の制定を求める運動を起こして下さい。

再利用は、遺産を保護するだけでなく、持続可能性を維持し、環境に配慮するという観点からみても、建物を丸ごと破壊するよりも、はるかに理にかなっているとウェイブは指摘します。

 

歴史的な宝物を、世界の人たちが自分の手元に取り戻せるようにすることも重要です。

何年にも渡り、他国を侵略した入植者たちは、その侵略先の芸術品などを持ち帰って行きました。
フランスの博物館だけでも、アフリカ諸国から盗んだ文化財が9万点所蔵されているといわれています。

このような文化財を、本来の所有者に対して返還を求める運動をぜひ支援して下さい。

 

築100年の鍛冶屋も、ナイジェリアの青銅彫刻も、大聖堂と同等の歴史的価値を有しています。

このような歴史的遺産は、保護される権利があります。

私たちの生い立ち、私たちの地域・国家、そして人類の過去を伝えてくれるものなのですから。

私たちひとりひとりに、遺産を保護し、還すべき場所に還す責任が課せられています。


参考リンク

 

世界に衝撃を与えたノートルダム大聖堂の火災

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201904180000168.html

 

ノートルダム大聖堂火災発生後の膨大な寄付が、実は世界の人種差別や不平等の深刻さを露わにしているという指摘

https://www.kyodo.co.jp/col/2019-04-22_1984336/

 

フランスに対して文化財の返還を求めるアフリカ諸国
https://mainichi.jp/articles/20190107/ddm/007/030/087000c

 

大英博物館から、ナイジェリアに「返還」された青銅彫刻

https://www.japanjournals.com/uk-today/12199-181207-2.html

 

※文化財の返還は、実は日本も無縁ではない。かつて日本が植民地支配を行っていた韓国からも、日本に対して文化財の返還を求める運動が起きている。

https://japanese.joins.com/article/728/250728.html